が階段を上がっていった音を聞いてから台所に駆け寄った。室温にするため放置していた生クリームのパックを片手に持ち、解凍したチューブのホイップクリームを冷蔵庫から取り出す。再びストーブのスイッチを入れた居間で、二種類のクリームを手に、畳の上にブランケットを敷いて準備完了。このブランケットは洗濯機で洗えるものだから汚しても大丈夫ということは確認済みだ。
 トナカイでやる予定でいたけど、がミニスカサンタの衣装を買ってきたからそっちに着替える。
 …スースーする、と腿が十センチしか隠れないベロアのような光沢の赤いスカートを引っぱる。
 白いふわふわした裾を含めても十センチと少ししか丈がないだなんて。ニーソは部屋にしかないし、生足になっちゃうから寒い。
 アンダー、は、トナカイでするつもりでいたから問題ないとして。このトップスはなんなんだ。ほとんど下着じゃないか。胸元のホックと首紐で繋がるだけで、お腹は見えてるし、背中も大きく開いてるし、寒い。
 ぶるりと震えながらサンタ帽を被って二の腕まである赤い手袋をした。どれもこれも赤いベロアの生地にふわふわした白いのをくっつけてサンタをイメージしてある。
 が来ないうちにすませなくては。躊躇っている時間はない。
 生クリームのパックを開封する。室温に戻してもまだ冷たい。けど、あたためている時間もない。
 合わせた足にそろそろとパックを傾けると、とろりとした白い液体がこぼれた。冷たっ、と悲鳴を上げそうになるのを堪えて足を濡らし、腿まで濡らして、あとは上から被った。胸も背中もお腹も冷たいものが這っていき、ぞわぞわと寒気がする。
 肌を伝った生クリームがショーツを濡らすのを感じた。恥を殺してショーツの中も白い液体で濡らす。前も、後ろも。
 あとは適当に肌が見えてるところとかにチューブのクリームを絞った。冷たい、と震えながらこれ以上は無理かなと半分使ったチューブをポイッと放る。
 この格好じゃあストーブの温度を高めにしても寒いな、と白い色で濡れた自分を見下ろしたとき、階段を下りてくる足音がした。途端に、心臓が騒ぎ出す。ここまでして反応が薄かったらどうしようと今更なことを考えた。十四歳なんだから普通に彼の厚意と好意に甘えていればよかったんじゃないか。ここまでして、引かれでもしたら、どうしよう。
 ぐるぐると今更なことを考えていると、とん、と襖戸が軽くノックされた。「恭弥ぁ着替えたけど。もう入っていい?」という彼に、かくり、とぎこちなく頷いて、それでは通じないことに気付く。頷いた拍子に顔を伝った白い液体に片目を瞑った。冷たい。
 ごくんと唾を飲み込んで、覚悟した。「いいよ」と吐き出した声が震える。襖戸はからりと呆気なく開かれ、そして、視界の中の彼は眠そうに欠伸をこぼした姿勢で固まっていた。
 …駄目だ。堕ちるまで見つめていようと思ったけど、恥ずかしくて、できないや。
 顔を俯けて、やっぱりやらなければよかった、と思う。寒いし、冷たいし、いい加減眠いし。がプレゼントを用意していたことに満足して眠っていればよかったんだ。
 たん、と襖戸が閉まった。とたとたと畳を進んできた彼がいつものスウェット姿で僕の前に胡座をかく。恥ずかしくてその顔を見れないでいると、トッピングした腕から体温で溶け出した絞ったクリームが肌を伝っていった。最後にはブランケットの上に落ちる。ああ、さっそく汚した。
「食べてもいーよってこと?」
 低い囁き声にぎゅっと目を瞑って浅く頷く。
 ふぅんと笑った声のあとに、膝をくっつけて座っている左足に生あたたかいざらりとした感触。びくんと身体が跳ねた。「あっま」と笑った声の主が僕の肌を舌で拭っているのが分かる。
 そろりと目を開けた。僕の足に舌を這わせて生クリームを拭っているがいた。僕に奉仕しているような形の彼に顔が熱くなってくる。
 食べ残しみたいにところどころ汚したままの顔は右足に移った。舌で白い液体と絞ったクリームを拭われて、そのぬるくやわらかいものに舐められていることで、背筋が騒いできていた。
 ぴちゃ、とわざと音を出して僕を煽るはずるい。音を立てて肌を吸われたら嫌でも身体が震えてしまうじゃないか。
 さっきまですごく寒いと思ってたのに、今はもう熱くてたまらない。
「ん…っ」
 ぷち、と胸を隠しているだけのトップスのホックを外され、白い液体で濡れた鎖骨に唇が埋まった。中途半端に拭われてぬるぬるしている肌をの細長い指が滑って掌が撫でていく。
(ラブホでしかシないって言ってたけど、ここまですれば、堕ちて、くれるよね)
 胸の突起を捻った指に耐える息を吐き、鎖骨から首筋へと這い上がってくる舌にぞくぞくと背筋が騒ぐ。
 身体がとても熱い。燃えてるみたいだ。
 どさり、と背中からブランケットの上に倒されて、彼にされるがままに食べられる。

 僕らのクリスマスは、ここからが本番だ。