性行為が初めての高校生でもあるまいし、何をこんなに盛ってるんだ。俺も、恭弥も。そう思ってしまうくらいにはいい歳した大人の男二人は性に溺れて、何日たっても、その余韻が頭から消えない。あと、初めての二日酔いのひどさも感覚として新しく、まだ身体から抜け切らない。 あの夜から何日も開けないうちに恭弥が店にやってきて、いつもみたいにコーヒーを頼んだ。 ホテルでの夜のことなんてなかったみたいに営業用の笑顔を浮かべる俺と、一人のお客さんとしてテーブルの一席を占拠する恭弥。俺は仕事柄そうしないとならないから、黒いパンツと白いシャツというシンプルな格好の恭弥に抱く欲情を精一杯自分の中に押し込んだ。 コーヒーのおかわりを注ぎに行ったときに一度だけ手の甲を細長い指で撫でられた。それだけ、だったけど、それだけの仕種に胸がきゅーっとなって痛い。 読書のため伏せられた目。長いなと思う睫毛。どこにも隙のない整った顔。 あまり生気というやつが感じられないまるで作り物めいたその顔が、ほんのりと上気して頬を染め、舌を出して俺を求める。 、と甘い声に呼ばれた気がした。 いかんいかんと自分を律して営業に戻り、今日はまだ帰らないんだな、と十六時を示すアンティークな壁掛け時計を見て思った。 その日の恭弥は夕方の閉店時間まで本を読むか携帯で何かの連絡を取るかしてずっと店にいた。俺が片付けを始めた頃にも席を立たなかった。誰か他のお客さんなら店じまいですよと声をかけるところだけど、相手が恭弥なので、俺も何も言わなかった。食器をきれいに洗って、汚れが取れないものは漂白剤につけるなどして処理をし、テーブルと椅子をきれいにするために消毒のアルコールと布巾を数枚持って移動。カウンターからテラスのテーブル席まできれいにする。 あとは、恭弥のいる席だけだ。 「恭弥」 声をかけると、ぱたん、と本を閉じた恭弥が黙って席を立った。恭弥のぬくもりが残っている椅子をアルコール消毒するのになぜか躊躇いが。その席に座りたい…。という欲を堪えてしゅっとアルコールを吹きかけて布巾で拭う。 掃き掃除はいつも翌日と決めていたから、あとはトイレの掃除をして、それから。 そこで、ぼす、と背中に衝撃を受けた。「…恭弥?」微妙に中途半端な姿勢で固まった俺の腰辺りにシャツに包まれた腕が回って頭の中がちょっとフリーズする。 「仕事、おしまいだろ」 「ん。今日はおしまい」 「…君の、住居って、この上なんでしょ」 「うん」 恭弥が何を言わんとしているのかだいたい察した。 が、俺は明日も仕事だし、何よりあれからまだそう日がたってないはずで、俺よりも恭弥の方が身体が辛いはずなのだ。そこを考慮すると部屋に招いてしまうのはどうかという気がする。俺も恭弥も男だけど、男だからこそ、火がついたらお互い止まらないし止まれない。 「身体、まだ痛いんじゃ」 「うるさい」 背中越しのこもった声と、甘えるようにやわらかく抱き締められて、胸にぐっときた。応えてはいけないと思っていたのに白いシャツの向こうにある肌を望んでしまう。手を滑られて袖口から肌を撫でてしまう。 …何を高校生みたいに盛ってるんだ。いい歳した大人の男が二人、他のこと全部を忘れ去るようにお互いを奪って、貪って、馬鹿みたいにセックスばっかりしてる。 「ん…ッ、ん、ン」 枕に顔を押しつけて声を抑えようとしてる恭弥がかわいいなと思ったら興奮してしまった。ふるりと身体を震わせた恭弥が少しこっちを向いて「ころす、き?」とこぼす声が震えてて、普段は人形なんじゃないかってくらい整った顔に人間味があって。俺はこっちの方が好きだけど、こんな蕩けた顔はセックスのときだけでいいや。そうじゃないとところ構わず襲ってしまう気がする。 「きょーやがかわいーから」 ちゅう、と背中にキスすると笑われた。「ばか、じゃない」「うん」馬鹿だよ、と肯定して恭弥の腰を掴んで、途絶えることのない性欲を突き込む。「ふっ」声を殺した恭弥がまた枕に顔を埋めた。腰だけこっちに突き出した格好でちょーエロい、とまた興奮した俺に、恭弥は呆れたように唇を歪めてからすぐに快楽に溺れて喘いだ。 そんなふうにして何度か夜を過ごすうちに、なんとなく、白蘭のもとへ行くのが疎遠になっていた。 長い付き合いになるあいつのことだ。きっと俺の変化に気付くだろう。その場合俺はなんて言い訳すればいいんだろう、とか考え始めると、白蘭と顔を合わせること自体が億劫っになってしまって。決してあいつが悪いわけじゃないんだけど、これは俺の面倒くさがりな性格が手伝っている。 その日は店の定休日で、朝からタブレットが電話だよ電話だよと寝ている俺を叩き起こした。 毎度恒例の朝のテレビ電話だ。しかし、前日の夜恭弥とベッドを軋ませていた俺にはなかなか眠い時間である。 『ねぇねぇ僕のご飯はぁ? が来ないから冷蔵庫の食材みんな捨てるかあげるで処理してるんだけど? ねぇー』 「ごめんてば…。今日は行くよ。お店休みだし」 『ほんと? 絶対? 待ってるよ? 冷蔵庫いっぱいにして待ってるからね?』 「いっぱいにせんでよろしい。…じゃ、あとで」 相変わらず食生活が適当な白蘭に吐息して通話を切る。はぁー、とベッドに顔を埋めて、ちょっとだけ恭弥のにおいがするな、なんて思って胸が苦しくなった。 何回キスしても。何回セックスしても。ただ、足りない、と思う。 …俺ってこんな絶倫だったっけ? 自分に首を捻りつつ今日の予定を考える。白蘭に行くと言った手前、行かないと。そろそろ腹を割って話す覚悟くらい必要だろう、と身体を起こしたときだった。「全く、雲雀くんは使えませんね」と第三者の声がしたのは。 ここは店兼家である。俺は一人暮らしだ。知らない誰かが部屋にいるとするならそれは窃盗とかそういう類の犯罪者で間違いない。 冷や汗を感じつつ振り返った先にいたのは、特徴的な髪型、というか頭頂部をした男が一人。 その頭でよく憶えてる。一度だけ恭弥と連れ立って店に来た人だ。 その手には、なぜか槍が握られている。 凶器ってことか。随分古典的な凶器だけど、素手の俺に比べればマシってものだろう。 どうする、と生唾を飲み込んだ先で、槍の先端が俺に向けられる。仰け反って避けようと思うくらいには刃の先が近い。 「残念ですが、ここまでです」 洗いざらい吐き出してもらいましょうか、という声がぐにゃりと歪む。それに合わせて目の前の景色もぐにゃりと歪んで、 そこで、俺の現実意識というやつは崩壊した。 「夢ぇ? 僕の?」 ミーンミーンと鳴き叫ぶ蝉の声を聞きながら、俺達はスーパーで食材の買い物をすませ、ついでにアイスを買って食べつつ帰路を辿っている。 ぱた、とサンダルの足を止めた俺に二、三歩進んでから白蘭も足を止めた。「どったの」と三歩下がって俺に並ぶ白蘭の顔にも暑さで汗が浮かんで見える。 どうして俺はここにいるんだろう。 そんなことを考えた俺は、何なんだろう。 いや、とぼやいて歩みを再開する。そんな俺を気にしたふうでもなくそーとぼやいた白蘭。二人で暑さの中をだらだらと、しかしエコバッグの中に肉やら魚やらが入っていることを考えればそうだらだらと歩いてもいられず、だらだらしつつも大股で家に帰る、途中だった。 「なんかあるんだろ。俺に訊いてきたくらいなんだから」 「えー。そうだなぁ。夢かぁ。そうだなー」 そうだなーそうだなーと一人ぼやく白蘭が一足先にチューペットを食べ終わった。「幸せになりたいかな」「は? …もっとこう具体的な何かは? 目標とかあるだろ」「んー、そうだなぁ。今がけっこー幸せだからなぁ。ダメだねぇ、もっと欲張りにならないと」にこにこ満面の笑みを向けてくる白蘭に呆れる俺。 遅れて溶け始めていたチューペットのコーヒー味をすすって食べ終え、ふっと息を吐く。 「白蘭て、よく分かんないな」 ぼやいた俺に、あいつは笑った。 「そうだね。僕もよく分からない。なんのためにこの世界はあるんだろうね?」 「哲学かよ」 「違うよー。本当に不思議なんだ。だって、この世界は」 ミー、と鳴き叫ぶ蝉の声でそれ以上は聞き取れなかった。 夏の陽射しが眩しくて手をかざす。サングラスがいるな、と思いながら白んだ白い光に目を細めて、早く帰らないと、と思う。保冷パックに突っ込んだとはいえ、この暑さじゃ肉と魚が悪くなる。その前に早く。 帰ろう、と声をかけようとした白蘭が蜃気楼のようにゆらゆらと頼りない。 気がつくと、景色の全てが歪んでいた。陽射しも。蝉の声ですら。 「ダメだなぁ。記憶の再生だよ、それ。今何してるの? どこにいるの? ここは、もうすんだ過去だよ」 白蘭の声が蝉の声と一緒にぐるぐる頭の中を回る。 既視感、がある。俺はこの景色を知っている。そう、白蘭が言うように、これは、もう過ぎた夏の出来事だ。 「今朝、僕にご飯作りに行くって約束したよね?」 「…、」 した。タブレットで、テレビ電話機能で、確かに。そういう会話をした。 ばさ、と肩を滑り落ちたエコバッグの中には何も入っていない。保冷パックが転がっただけだ。 あんなに暑いと思っていた陽射し、コンクリートの路面からの照り返しの熱が、急速に冷めていく。 「白蘭?」 「捕まっちゃったんだねぇ、。ダメだなぁ。もう、世話が焼ける」 けらけら笑う白蘭の声が歪む。これは君の脳に負担をかけるから、早く目を覚ましなさい、という声を最後に、視界が真っ白に染まって何も分からなくなった。 「何してる!!」 代わりに飛び込んできたのは、知っている声だ。誰だっけ。誰だっけ…? 気がつくと、俺はぷかぷかと水面に浮かんでいた。それがどうしてかは分からない。思考回路がブツブツだ。何かに区切られているみたいに繋がりがない。 ぼんやりしている意識は、それが誰かを思い出せない。 誰だっけ。知ってるんだけど、顔が、浮かばないや。 俺と一緒にぷかぷかしてるのは白蘭だ。だけど人形みたいにぴくりともしない。白蘭、と肩を揺さぶっても反応がない。まるで死んでるみたいだ。 たたえられた水以外にあるのは、俺と白蘭。それ以外は何もないまっさらな空間は、白い空間を映した水も全てが白くて、そういう鏡の世界にいるみたいだった。 「あなたに任せても埒が明かないと分かりましたので、僕が直々に調べていますが。見て分かりませんか」 「それは、人の頭の中をほじくり返す禁手だろ。沢田はそこまでしろなんて命じてないはずだ」 「ええ、そうですね。ですが彼は甘いので、誰かが率先して泥を被らなくてはなりません。そして、能力的に、この手の專門は僕です。君は喧嘩をするのが得意だからそちらの專門。今回は彼と個人的に親しいようだったから任せてみたんですが、やはり無駄でしたね」 「六道…!」 、と呼ばれた。白蘭の声ではない。名前も顔も思い出せない誰かの声。「意識があるんだろ、起きろ。僕が六道を咬み殺すからその間に」、と肩を揺さぶられる。肩に触れた掌の形と、水面を揺らす水紋、触れたぬくもりに、半分しか開かなかった目が開いた。 誰だっけ。思い出せないけど。でも。よく知っている形の。 ゆらゆらしてるだけだった白蘭の手がぎこちなく動いて俺に触れた。瞳の入ってない人形だった白蘭が「いいかい、よく聞いて」と言う声に意識をそっちに向ける。今この場で分かるのが白蘭だけで、頼れるのも白蘭だけだから、俺には白蘭しかいないのだ、と意識が思い込む。 「僕が今から助けに行く。いい? 君は今捕まっていて、頭の中の記憶を強制的に再生させられてる。脳に負担がかかってるんだ。そのままの状態を続けているのはいけない。どこかに欠陥が生まれてからでは遅いからね。 いい? 僕が、君をここから追い出すから、とにかく長く逃げ回って時間を稼いで」 「わか、た」 話しが長すぎて、とにかく逃げ回る、くらいしか記憶できなかったけど、頷いた。自分がなんかヤバい状態にあるというのはなんとなく分かった。白蘭が助けてくれる。それも分かった。じゃあ充分だ。 バシャッと勢いよく水を揺らして、白蘭が水の上に立った。そうすることが自然みたいに立ち上がって、ぷかぷかしてる俺の脇に手を差し入れると「じゃあすぐ行くからね」とウインクして、「FlyHigh!」と俺を高く高くに放り投げた。それこそ、飛んだ。白い景色がぐんぐん遠ざかってすぐに白蘭が分からなくなり、そして、現実に還った。 「…、」 ぼんやりと霞む景色に目を凝らすと、ビュッと耳元で何かが鳴った。何かが空を切る音。本能的にヒヤッとする音だ。こう、投擲された野球ボールが顔の横を通過したような感じ。当たったら確実に痛いやつ。 逃げ回れ、と言われたことを一番に思い出して、寝起きみたいにだるい身体で手を這わせる。 視界がいつまでも死んでる。ぼやけてるというか、はっきりしない。誰か、二人くらい、いるのが見えるんだけど。 指の感覚も曖昧だ。硬いものに触れてるのは分かるんだけど。 「いいですか雲雀くん、冷静になりなさい! 彼がこの先のキーとなる存在であることは明白です! ボンゴレのためにも、この処置は必要です!」 「廃人にすることが? 君の奴隷にすることが? どちらにしても僕は納得しないし、ボンゴレなんて、どうだっていい!」 剣がぶつかり合うみたいな硬い音を聞きながら、現状把握に努めようと、這わせた手でぺたぺたとその辺のものを触る。 耳、なんか音がこもってる。誰が何を話してるのか判別が難しい。 ぼやけている視界では何がなんだかよく分からない。逃げろと言われたけど、これじゃ逃げるのも難しい。立つことも無理そうだ。どうすれば。 キン、と硬い音がしてゴッと重い音を立てて近くに何かが落ちた。銀色? みたいに見えるけどなんだろう。 「ロール!」 「そう来ますか。ならば僕も遠慮しません。ムクロウ!」 飛び交う言葉がどういう会話なのかも分からないまま手を這わせて、ずる、と姿勢が崩れた。台の上か椅子の上か、何かの上だったらしく見事にずっこけてカッコ悪い転び方になる。いってぇ。 メキメキと硬いものが軋む嫌な音がした。ぼやけてる視界を上げたところで何がなんだか判別がつかず、空中を舞う黒い何かが見えるだけで、状況がちっとも分からない。 白蘭。白蘭はどこだ。白いあいつは。あいつが黒い格好をしてくるはずがない。いつも天使みたいに白い格好で、にこにこ笑ってて、甘えてくる。世話が焼けるけど同時にこっちの世話も見てくれる、何でもできて、よく笑う、あいつは。 「びゃく、」 全てが泡の向こうにある景色みたいに遠い。ぼやけている。逃げようにも身体が上手く動かないし、声だって上手くでないし、俺、今どうなってんだ。 「びゃくら、」 ある日あるとき、俺の日常にふわりと舞い降りた白い天使の名を呼んだ。 訳の分からない状況、訳の分からない今に、心が焦り始めていた。 油断すれば叫んでしまいそうな焦りと恐怖をどうにか内に押し込め、とにかく、壁際まで、と手を這わせながらずるずると移動した先で、黒い何かがどさっと勢いよく倒れてきて内心悲鳴を上げて手を引っ込めた。ち、と舌打ちした音がまだ歪んで聞こえる。「少しは人の話を…おや、君、動けるんですね」「…、」何となく後退る。まともな言葉は聞き取れないけど、後半がこっちに顔を向けた俺への言葉だということだけは理解した。 「それなりに強い暗示なんですがね。もっと深くまで堕としてあげましょうか?」 「……、」 何かヤバい。伸びてきた手にそう感じた。ひやりと背中が冷たくなって、ばしっ、と力任せにその手を振り払って「びゃく、びゃくら、白蘭っ!!」今出せる精一杯の声で助けを求めた。これ以上一人で何かできる自信がなかった。本格的にパニックに陥ってしまう前に助けてほしかった。 そこからは、連続だった。 どこかで何かが爆発したように風煙と轟音がした。それまで俺に意識を向けていた誰かはそっちに気を取られた。俺はその隙にとにかくこいつから離れなくちゃならないと思い、足をもつれさせながら必死になって走った。 煙の向こうに、白い色が見えていた。 「白蘭…ッ!」 「聞こえてるよ」 おまたせ。望んでいた声がそう言って俺を後ろから抱えて飛んだ。と、錯覚した。足元が浮いたから。ぼやけている景色がそのまま遠くなるから、そのまま、意識まで遠くなる。 「? だいじょーぶ?」 「ん…」 「遅くなってごめんね。穏便にすませた方がいいかなーなんてちょっと迷ってさ。結局強行突破してきたけど」 白蘭の声だけがちゃんと聞こえる。まだ視界はぼやけてるし、よく分からない耳鳴りがするし、感覚は曖昧だけど、白蘭が俺を助けに来てくれたんだってことは分かった。 じゃあ充分だ、と疲れた意識を落ち着けようと深く呼吸したとき、何かに乱暴に頭を鷲掴みにされた。そう感じた。たとえるなら、ジェットコースターとかで上下左右に振り回されるあの気持ち悪さだ。遠慮なく、粗雑で、そして、抗いようがない。 白蘭じゃない。白蘭は俺を抱えて飛んでる。手が空いてない。じゃあ、この手は、一体誰の。 その気持ち悪さに頭を抱えた俺にかけられた、よく知っているはずの声が、歪んで聞こえる。 『タダでは逃がしません』 そして、最後にそんな声が聞こえた。そのときだけはっきりと。 それが俺に槍を向けたあの人のものだと気付いた。そして、恐らく、あの人が俺を捕まえたのだろうということもうっすらと理解した。 (恭弥) それから。その人相手に俺を守ろうとしていたのが恭弥だということも。 唐突にこみ上げた愛しさ。走馬灯のように走り去るこれまでの日々。なんてことない、どちらかといえばついていた日常に、涙がこぼれた。 (愛して、) ぶち。ブチブチブチ。 何かが引きちぎられる、脆くて呆気ない音。 六道骸に精神的に半分汚染されていた状態だった俺は、その汚染を介して脳を揺さぶられ、過去の記憶という細い糸を寸断された。 |