蕎麦を食べて、片付けをして、思った。やることがない。 着替えその他の入った荷物はあとで届けてくれることになってる。つまり、今やるべきことっていうのがない。 お昼を食べ終えた今はといえば、大きなテレビのある部屋を見つけたからそこで座布団集めて寝転がって、適当にテレビを見てる。とても自堕落。本当なら今頃インターンで街を走り回ってる頃のはずなんだけど。 ずし、とした重みがのしかかってくるのに耐えながら「重いよ」と言ってみても、焦凍は俺の上から退こうとしない。穴が開くくらいじっとこっちを見ている。「ええ、何……トイレ? 実家だから場所わかるだろ?」むしろ俺が困るから今のうちに探しておくのはアリかも。 よし、と起き上がって、広い家の中でトイレを捜索。わりとすぐに見つかった。広い家だけあってトイレもあちこちにあるから助かる。「ほら、トイレ」したいのかなと思って指さしてみたけど無言で首を横に振られた。あっそう、違うのか。 それで、むんず、と俺の手を掴んだ焦凍がどこかへと歩き出す。「え、何。焦凍?」またテレビでも見てだらだら過ごそうかと思ってたのに。 焦凍に連行されながら、ポケットで震えた携帯を引っぱり出す。エンデヴァーだ。 「はい」 『焦凍がかけられた個性の件だが』 「何かわかりましたか」 『ああ。要約すると、アニマル化の個性と相性が悪ければ短時間しか効果がなく、相性が良ければ半日ほど持続するらしい』 「…それは、えーと。今のところ焦凍は犬のままなので……アニマル化の個性と相性がよかった、ということですか」 『不運にも、な』 電話口で溜息を吐いているエンデヴァーに苦く笑う。 個性が解けるまで引き続き焦凍の面倒をみるよう言われて了承し、通話を切る。 たまにはこういう日もある。今日はもう体を休める日だとでも思うしかない。 俺を気にしてちらちらこっちを窺ってる焦凍に連れていかれたのはわりと奥まった部屋で、和風の家に似合う障子戸で仕切られていて、勉強机や箪笥など、どことなく見覚えのあるものが配置されていた。「…焦凍の部屋?」「わう」どうやらそういうことらしい。 で、部屋に俺を連れてきて何がしたいんだと思っていると、押し入れから布団を引っぱり出し始めた。「寝るの?」犬だし、昼寝とかしたいのかもしれない。 深く考えずに布団を敷くのを手伝って、冬美さんが普段から気を遣ってるんだろう、黴臭さもない布団に感心していると、押し倒された。どさっと。……ん? 「あー。うん。犬、だもんなぁ」 性的に思う相手がいるとして、焦凍が犬であるなら、そりゃ勃起もするだろう。人間は理性ってものがあるから性欲をある程度コントロールできるけど、犬ってたぶん違うし。 自分からぽいぽいヒーロースーツを脱いでいった焦凍が俺のヒーロースーツを脱がし始めた。問答無用でジャケットを剥ぎ取ってシャツのボタンをぶっちぎる。力加減。 っていうか。完全に勃ってらっしゃる。 ヒーロースーツを放られる前になんとかゴムと潤滑油だけ確保したけど、準備も何もしてないのに、犬な焦凍はお盛んだ。俺のにかぶりついてキャンディを舐めるみたいに夢中になってしゃぶっている。 ……なんつーか。なりふり構わないでセックスしたいって前面に出してる焦凍、けっこー好きかも。えっち。 本当なら洗浄とかしておきたいんだけど、犬ができる待てには限界がありそうだったから、今日は色々諦めた。 いつ焦凍が戻ってきてもいいようにということなのか、畳の上にきれいにたたんで置いてあるシーツを掴んで適当に広げる。 これ、汚しちゃうだろうけど。 潤滑油をたっぷり落として尻の方に指を埋めていくとびくんと焦凍の体が跳ねた。「いきなりは無理。裂ける」狭い中を指をぐにぐにさせて広げながら、ぽたぽたとガマン汁を漏らしてる焦凍が「うう」と鳴く。早くして欲しくて仕方ないとばかりに腰が揺れて、フェラしながら上目遣いでこっちを見るという高度な技を。してくる。そーいうのムラムラする。 まだ指二本、ようやく三本入るか入らないかってところで俺の方に限界がきた。そんな吸われてたら出るだろ。 「もー挿れたい」 ぼやいてゴムをつけた俺に、焦凍は四つん這いでぽってりした孔を向けてきた。 そっか犬だから、普通はそうか、四つん這いか、なんて思いながら揺れてる腰を掴んで先っぽを押し付け、潤滑油をもう一回垂らして撫でつける。 ここ、轟の実家で、焦凍の部屋で。なんだか背徳感がすごいな、と思いながら焦凍の中にずぶずぶと熱を埋めていく。 「う、ぅ……ッ」 がりがりと爪で畳を引っかく焦凍の手を握り締めて敷布団の上まで戻す。「痛くない」「う、」「気持ちくなる。知ってるだろ」どこまでが犬でどこまでが人間の感覚として届いてるのかは知らないけど、犬は尻に物入れないよな。コワイかな。その辺考えてなかったけど。 あんまり苦しくないように。焦凍が怖いと思わないように。 最初の頃のセックスみたいに前立腺中心に焦凍が気持ちよくなれるようにシていったら、すぐに蕩けた顔になった。 だらしなく口を開けて、唾液を飲むのも忘れて、腰をへこへこさせて、普段の焦凍よりもなりふり構わず快楽に溺れてる、って感じ。 これならもう少し奥に行ってもいいだろうと焦凍の中にずぶずぶ押し進んでいって、痛そうだったり怖いという感情が出るならそこで止めようと思ってたら、根本まで入ってしまった。 「……痛くない?」 焦凍の腹を手のひらでさすって訊いてみる。とくに耐えている顔はしてないから大丈夫だと思うけど。「このまま、スる?」こん、と焦凍の奥を軽く突くと先っぽからぴゅっと透明な液体が漏れ出た。 体を跳ねさせた焦凍は何も言わない。スるとか、シないとか、そういう言葉は出てこない。今は犬だから。 お互いこのままは消化不良だろうし、一回イこうと、焦凍の前をしごきながら奥をこんこんとノックし続けて一度目を吐き出した。 きゅうきゅうと締め付けてくる焦凍の中から自分のを引っこ抜くのに苦労する。 今日はきれいにする過程をすっ飛ばしてるから、色々ついてきてしまったコンドームはティッシュでたくさんくるんでポイ。 布団の上でぐたっとしたまま動かない焦凍の頬を叩く。「大丈夫?」「ぅ……」薄目を開けた焦凍の視線が不安定に彷徨っている。犬としては初めての快楽だったのかもしれない。体は経験済みだからそこまで刺激は強くなかったと思うんだけど。 とにかく、体をきれいにしなくちゃならないから、寮ほどとはいかないまでも個人宅ではでっかいなと思うお風呂を沸かしてありがたく入浴。 「はー極楽」 二人で入っても余裕の広さがあるお風呂っていいなぁ。 セックスして満足したのか、大人しく湯銭に浸かっている焦凍を見ながらぼやっと考える。 もし、仮にだよ。本当に俺が轟の家に来られるような未来があったら。そのときは、こういうの、日常になるんだよな。焦凍の部屋でセックスしたり、焦凍とお昼食べたり、だらだらしたり。それって控えめに言って天国だなぁ、なんて。 (よし、現実を思い出そう。風呂から出たら汚しちゃった布団を片付けないと。シーツとか色々) パチン、と頬を叩いた俺に焦凍がびくりと肩を震わせた。「あー気合い入れただけ」驚かすつもりはなかったんだけど。 それで心配そうに寄ってきたかと思えば叩いた頬をべろっと舐めてくるのが。こそばゆい。 |