映画『すずめの戸締り』に影響を受けて書き始めた連載ですが、まぁまぁ複雑なので、設定部屋を置いておきます
 轟はいつも通りのプロヒ設定で特別なことはないのですが、

・夢主くん(とその周囲の設定)
・『個性』の扱い
・星、大地等の記載について


 が他のお話とだいぶ違っているので、一読してもらえると幸い
このお話での『個性』の設定について
 原作の方でも「個性は光る赤子が生まれた」というところから語られていますが、なぜそんな子供が生まれたのか、そこからどうしてここまで個性持ちの人間が広まったのか、などの細かい設定は不明です
 ただ、最新の映画で名言されていたように、ヒロアカの世界では『人類の八割が個性持ち』ということになっています

 そしてここで合わせたいのが、殻木がむかーしに発表したとされている『個性特異点』の論文、俗にいう個性終末論のお話です
 つまるところ人が個性を得た故に人類に終末が訪れるという内容なわけですが、この連載ではその設定を採用しています
『世代を経るごとに混ざり、より複雑に、より曖昧に、より強く膨張していく個性。その容量の膨らむ速度に人の身体の進化が間に合わず、個性はコントロールを失う。いずれ人には制御できなくなる』
 そんな内容の論文ですが、当時の世界には受け入れられず話題にもならなかったこれは、現在のワンフォーオールやオールフォーワンにも見られる傾向ですよね。個性が自分で思うように制御できなかったりとか。望んだように個性がコントロールできない、というのは最新映画のボスもそうでした

 で、この終末論をそのまま利用するわけではないのですが、このお話では『個性』は『星、世界、あるいは神』が仕掛けた人類終焉のための時限爆弾という扱いになっています
『星、世界』などで表現しているモノについて
 なぜ突如として個性を持つ子供が生まれ、驚異的なスピードで人類へと浸透し、ここまできたのか?
 それを考えたとき、ふと思ったのが、『これが星、あるいは世界の意志なのでは?』なんて考えでした
 簡単に言うと『神様の意志なのでは』ということですね

 ヒロアカの世界では個性が存在することはもう当たり前
 そして、その当たり前の『個性』そのものをある程度科学などの力でコントロールできることは作中でも色々されています(個性を消失させる個性があったり、個性と個性をかけ合わせることで理想の個性を持つ子供を作ろうとしたり、脳無などもいますよね)
 最新映画、ワールドヒーローズミッションなどでは個性因子を操作してうんたらのくだりがまさしくそれでした
 なので、個性は科学的にも研究されているモノであるはずですが、その発生についての明確な記載はない
 今回はそこを『星、あるいは世界、あるいは神と呼ばれるものの意志』というちょっと大きな設定にしました

 ではなぜ神がそんなことをしたのか、というと、端的に言って、人間が嫌いで憎いからです
 自然のことを、海のことを、地球のことを、世界のことを、星のことを、神のことを。神秘と呼ばれ尊ばれていたモノのことを忘れ去った、あるいは無礼を働くようになった、あるいは搾取するようになった。そんな人間という生物を許せなくなったからです
 だからこの星、あるいは世界、あるいは神は考えました
 まずは持て余す力を、個性を与えよう。それで人間同士を潰させよう
 それでもしぶとく生き残るのならば、その個性を爆弾として、人間を絶滅させよう、と
夢主くんについて
 夢主の家は上記で長々語って来たことが語り継がれてきた家で、人類絶滅のシナリオを回避するため、これまでひっそりと尽力してきた人々です
 具体的には、星や大地、神に対して感謝の念や心を忘れた人間社会の中で、彼らの無礼に代わり、神さまたちに謝り続ける。そのために生き続けるということを決めた人々です
 とくに名家でもなければ特別な個性を持つ家柄でもありませんでしたが、最初のご先祖と呼ばれる人はとても信心深く、自然や大地、星や神への感謝を忘れず、常に祈るような人でした
 まだそんな人間もいるのならと、『贖罪の機会くらいは与えるべきだろう』と神様が仙薬という神の代物を与えます
 その薬に適応した人間は、人をやめ、歳を取らなくなり、普通ならば死ぬような傷を負っても仙薬を飲んだ時点の体にまで再生する。いわゆる不老不死のような状態になる薬です
 その体をもって、世界各地の怒れる自然を、大地を、鎮めよ。というのが神からの意志で、ご先祖様は粛々とその使命を受け入れ、人間がしてきた所業に対して身を持ってその怒りを受けて鎮める、ということをするようになりました
 そうして少しでも放置されている怒りが、悲しみが、絶望が、人身御供の存在により救われるのなら、人間についてもう少し考えてやろう、というのが神が伝えた意思でした

 以降、夢主くんの家系は親近相姦を繰り返しては子供を増やし、我が子に仙薬を飲ませて『適応』した子供を『人身御供』として教育を施し、個性による人類終焉のシナリオを回避させるため、大義のために旅に出します
 夢主くんもその一人で、近親相姦で生まれた子供ということでもともと白髪、仙薬の影響で目が赤く、十歳で仙薬を飲んだにも関わらず、体の大きさは五歳児くらいしかありません
 彼が仙薬を飲んで適応した証として生まれたのが白い龍で、仙薬の化身でもあれば、人身御供の監視役でもあり、ある種の神獣といった存在ともいえます
 龍の役目は『人身御供がきちんと贖罪の旅をしているか見張ること』で、必要ならばその手助けをすることであり、人身御供がその役目を放棄するようなら、その旨を神に報告する義務も持っています

 そうやって夢主くんは白い龍とともに十五年間、日本の各地を巡ってきました
 人間に生まれ、その家系に生まれたが故に、身に憶えのない怒りに全身をなぶられ、何度も何度も死んだ方がマシだという苦痛を味わわされ、しかし、それは人間がこれまで星に対して、神に対して行ってきた冒涜のせいで、悪いのは人間。人間の自分が代表としてその怒りを受けているんだと、半ば諦めながら、夢主くんは龍とともに旅を続けています
 その苦痛に満ちた旅がもうすぐ終わる、ということを予感していた、そんなときに、轟焦凍と出会うことになります
用語解説

『龍穴(りゅうけつ)』
 龍脈に繋がる入り口であり、自然や大地のパワーが集まる場所でもある
 このため、水源として水を溢れさせていたり、火山の火口などになっていたりする
 古くからこういった場所は神社などで守られてきたが、その文化も時と共に廃れ始め、廃墟となってしまった場所も多くあり、夢主はこういった場所を巡っては正しい方法で穴を閉ざし、人の手が入らないようにしてきていた

『龍脈(りゅうみゃく)』
 星の内部の力が流れている、人間で言う血管のようなもの。普通の人間が断りもなく触れれば容赦なく拒絶される
 人の手によって龍穴が穢れ、龍脈からの力の流出が続いてしまった結果起きるのが『放出』とされる災害などであり、身近なものでたとえるなら地震や洪水などがそれに当てはまる
 力が放出されて大災害となる前にこれを止めるのが夢主がすべきことの一つでもある

『人身御供(ひとみごくう)』
 夢主の家系が代々近親相姦で生まれた子供に仙薬を与え、適応した子供に教育を施しなる者のことを言う。つまり、人類のための人柱である
 なぜ子供が選ばれるのかというと、『その身が潔白であり、無垢であり、そんな罪なき者が贖罪の旅をすることに意味がある』とのこと
 具体的には龍穴などの星のエネルギーが溜まりやすい場所を巡り、そこにある穢れを払ったりすることを役目とするが、怒りや負のエネルギーが満ちている場所を発見しては役目を全うしているため、夢主がすでに何度死亡したのかは定かではない

 今現在、彼の最終目的地は富士の山である